TS808 #1 Cloning mod. For Players:アンケート結果
Q1)お使いのギター、アンプなど、エフェクターの使用環境を教えてください。
さすがに、この回答は使う方によって様々ですね。もちろん、ストラトキャスターやレスポールといった王道のギターは手にしている方が多い上で、アンプは本当にバラバラ。しかし、多くの方が15W以上の真空管アンプでお試しいただいていることが解りました。そして、For Playersを使用するのであれば、私個人としてもそれを推奨します。トランジスタアンプのドライな質感に合わないとは決して言いませんが、ある程度のレンジ感を持った真空管アンプで使った時にこそ、マジックがあることは決して否定できません。
Q2)純粋なTS系のオーバードライブは、どのようなセッティング、どのような用途で使うことが多いですか?
この回答の中で過半数を占めたのは、DRIVEを控えめにし、VOLUMEを上げ、アンプをプッシュするブースターのような使い方。具体的に多かったのは、DRIVE 8〜10時、Tone 12〜3時のセッティングです。次に多かったのは単独のオーバードライブとしての使用で、最も少なかった声はToneをあまり上げないようなセッティングでした。これは逆に、For PlayersではToneを下げた際の音色も再検討する必要があることを示唆しているように思えます。
Q3)現状で最も好きなTS系エフェクターを教えてください。
集計してみると、最も多かった回答はヴィンテージのTube Screamer(Maxon OD-808、OD-9も含む)でした。ある意味では、納得の結果です。2番目に多い回答はLeqtiqueのTS系、Maestro Antiqueシリーズ、そしてMaestosoなどです。価格、音色の両面でこれもまた納得の結果ですね。ちなみに、私が特に好きなTS系は、90年代に作られたオリジナルWay HugeのGreen Rhino、TS系に属されることは少ないのですが、Smoky Signal AudioのTubeless α Tuningです。ああいったサラっとしたシルキーな歪みの質感が個人的には好みです(#1 Cloning modとは関係ありませんが)。
Q4)この1980 #1 Cloning mod.“For Players”(以下、For Players)を含め、TS系のエフェクターの前後で意識的に同時使用しているエフェクターがあれば、具体的な機種名まで教えてください。
その具体的な機種に関してはバラバラでしたが、前後にクリーンブースター、オーバードライブを併用する方が多いようです。For Playersも前段に置くゲインブースターのような使い方に長けるような音色を考えています。
Q5)通常のCULT 1980 #1 Cloning mod.はお持ちですか?
30%ほどの方が「はい」と答えられています。
Q6)Q5で「はい」とお答えの方にお聞きします。通常の1980 #1 Cloning mod.と今回の“For Players”を比べて、どちらが好ましい音色でしたか?また、その理由も教えてください。
回答はほぼ半分ずつでした。甲乙付け難いという回答もいくつか頂いています。しかし、目に付くことが多かったのは、ヴィンテージの質感に近いのは通常の#1 Cloning mod.、オーバードライブとして好ましいのはFor Playersという意見でした。とはいえ、意見は様々です。
Q7)モディファイも含め、Ibanez Tube Screamer/ Maxon Overdriveをお持ちでしたら、お持ちの機種を具体的に教えてください。(お持ちでない場合は空欄)
皆様、ヴィンテージ、モディファイ品を含めて、色々なTSをお持ちですね。私はMaxon派なので(笑)、Maxonのシリーズを多く集めています。
Q8)Q7で他の機種をお持ちと答えた方に質問です。お持ちのTube Screamer/Maxon Overdrive(どの機種かもお答えください)と比べて、今回の“For Players”はどのように違うと感じますか?
立体感がある、澄んだ音、ダイナミクスの幅が広い、それでいてバランスが良い、という意見がほとんどです。手前味噌ではありますが、同感です。今後の完成版ではその個性をより高めようと考えています。
Q9)“For Players”で気に入っているセッティング、ツマミの向きを教えてください。(複数回答可)
ほとんどの方が、Driveは10時以下、Toneは1時以上、Levelはかなり上げ目という意見です。言うならばブースター的なセッティングですが、For Playersではそういったセッティングで12インチ以上のスピーカーを搭載した真空管アンプで鳴らすと、素晴らしい質感の音の張りが得られ、私個人としても最もオススメのセッティングです。特に、LevelはMAXにすることが個人的なオススメのポイントです。逆に、完成版では単独のオーバードライブとして使える領域も強化すべきかもしれません。
↑ For Players仕様で最も好きなセッティングです。
Q10)この“For Players”は、通常の1980 #1 Cloning mod.から低域の量感を足しています。低域の質感に対してはどのように感じ、どのようになって欲しいと思いますか?
ちょうど良いとお答えいただく方が最も多かったです。足し過ぎていない低音、タイトなローということを評価されることが多く、幸いです。ただし、もう少し足して欲しい、足されている感じが解りにくいという意見もありました。その点は検討いたします。
Q11)この“For Players”は、通常の1980 #1 Cloning mod.と同様の高域の特性を備えています。高域の質感に対してはどのように感じ、どのようになって欲しいと思いますか?
この高域の質感に対しても肯定的な意見がほとんどでした。ただし、ヴィンテージの良い個体のように、もう一皮剥けて欲しいという声も1件見られました。確かに、ヴィンテージの良い個体に共通するのは音のクリアさであり、その点の再現もモディファイの内容に含まれていますが、そこをより追求すべきであると考えています。
余談ですが、島村楽器限定で発売中の#1 Cloning mod.のまた異なるスピンオフ企画、OD-9 #1 Cloning mod. Advancedは、Maxon OD-9が元々持っていたポテンシャルがうまく働き、ヴィンテージらしいクリアさの再現のという点ではより秀でていると思います。全体的な質感としてはTS808をベースにした2機種と異なるのですが、ぜひ試してみてください。
↑ こっそりOD-808バージョンも試作してみました。回路は近かったとしても、構造やパーツが異なるため、モディファイの素体となるモデルによって最終的な音色は大きく異なります。OD-808 verは個人的なお気に入り。
↑ OD-9 #1 Cloning mod. Advancedの裏面。もちろん、田村さんによって作られ、直筆のサイン入りです。
Q12)歪み量は十分でしたか?
ほとんどの方が十分とお答え頂いています。それだけに、最低ゲインを下げ、よりクリーン域での用途を拡張しても良いのかもしれないと考えています。実際、そのような意見を二人の方から頂いています。
Q13)Toneの効き方に何か要望はありますか?
ほとんどの方が現状維持を希望していますが、より明るい音が出て欲しいという意見も見られました。根本的な音色をよりクリアにすることで、全ての要望を賄えるのではないか、と考えています。
Q14)最終的な完成版はTube Screamerらしい中域が盛り上がった音色のままであることを希望しますか?
多くの方は「はい」と答えられていますが、「いいえ」と答えられている方も複数いらっしゃいます。ここはシンプルにTS系としての完成を目指し、中域が盛り上がった特性のままを考えています。ただし、その盛り上がる周波数帯域に変更はあるかもしれません。
Q15)Q14で「いいえ」とお答えの方に質問いたします。具体的に、どのような音色であることを望みますか?
より新しい音を聞きたい、より扱いやすいものが良い、などの要望を頂いています。
Q16)この“For Players”仕様に関して、何か具体的な要望があれば教えてください。
音色のことから外見のことまで、これもまた意見は様々でした。その中でハッとしたのは、「フットスイッチを踏みやすいものに変えて欲しい」という意見でした。確かに、元々付いているスイッチは通常の機械式スイッチと比べて踏んだ感触が弱く、TS808の絶対的なウィークポイントではあります。現在の価格のまま実現が可能かは解りませんが、検討してみます。
アンケートの内容は以上です。皆様から頂いたこれらの回答を基に、#1 Cloning mod. For Playersの完成形を設計者である田村進さんと目指していきます。音色、仕様、価格、発売日などはまだ未定ですが、必ず良いものとして世に送り出せるはずですので、ぜひご期待ください。
そして最後に小ネタを一つ。
TS808 1980 #1 Cloning mod.をお買い上げいただいたお客様から、以下のようなお問い合わせをいただきました。
「電池使用ではInputにギターからのプラグを差し込んだと同時に、ACアダプターではアダプターのプラグを差し込んだと同時にエフェクトONの状態(LEDが点灯)になってしまいます。この動作は正常なのでしょうか?(ノーマルのts808 、ts9を所有してますが、そのような動作はありません。)」
通常、TS808、TS9のエフェクトのON/OFFは、スイッチング用のFET素子を使用した回路で切り替えています。そのFETの個体差、FETの挙動を決めているパーツの個体差などでエフェクトがON or OFF、どちらの状態から立ち上がるかが決まるため、個体によってその結果がマチマチなのです。簡単に言えば、新品のTS808、TS9を複数台買ってみると、エフェクトONの状態で立ち上がるもの、OFFの状態で立ち上がるものに分かれます。
しかし、TS808 1980 #1 Cloning mod.シリーズは、発売当初からスイッチングFETの動作を決定付けるモディファイが施してあり、電源投入時には必ずエフェクトONの状態で立ち上がります。
その理由は二つ。まず一つは、大規模なルーティングシステムに組んだ場合の優位性です。ループスイッチャーのループの中にエフェクターを組み込むと、常にエフェクトがONの状態となってなければ使えません。リハーサルやサウンドチェックの最初や、ステージの転換時、エフェクトがOFFになっているとすれば、いちいちエフェクターを踏んでONにする必要がありますが、もしエフェクターボードが大きく、組み込まれたエフェクターが足元から遠くにあった場合、それは煩わしいはず。また、もしラックシステムに組み込むようなことがあっても、いちいち電源投入時にエフェクトをONに切り替え直すことは手間です。#1 Cloning mod.シリーズに込めた、「必ずエフェクトONの状態で立ち上がるという特性」は、時間に追われるサウンドチェックやステージ転換での一手間を省くことができます。
そして、もう一つの理由は、再現を目指した1980年製TS-808、通称Sample #1が偶然にもそういった仕様となっていたため、それを再現したからなのです。 特に公言することはありませんでしたが、私と田村さんはそこまで徹底的にクローンしていたのです。
以上、また次回のブログ記事をお楽しみに〜!
CULT代表 細川 雄一郎