現代でも世代を超えて愛されるファズペダルの一つ、Fuzz Face。1966年にイギリスのArbiter Limited 社から発売されて以来、53年もの間、愛用者を途絶えさせたことは一度もありません。それどころか、現代でも稀代の名手ばかりがFuzz Faceを愛用していることは、単に懐古主義者が多いという理由でFuzz Faceが愛されているわけではないということを証明しているといえるでしょう。
デジタルシミュレート技術が驚異的に進んでいる現代においてもFuzz Faceが愛され続ける理由とは、『Fuzz Faceがただのエフェクターではなく、楽器であるから』ということに集約されるはずです。トランジスタなどのパーツの誤差で個体差が生まれやすい点は、木材を使って作られる楽器とも似通っているとも言えますし、使い手や環境次第で様々な音色が引き出せるという最大の特徴は、多くの優れた楽器との完全なる共通点です。そのFuzz Faceが愛される理由、魅力を隈なく感じ取れる製品、Organic Sounds '66 Orga Faceを紹介いたします。
'66 Orga Faceはモデル名の『'66』が示す通り、1966年に生産された、発売最初期型のFuzz Faceを再現した製品です。単に『ヴィンテージFuzz Faceの再現』ということではなく、『1966年製Fuzz Faceの再現』ということに注目してください。
これが'66 Orga Faceの元となった、1966年製のFuzz Faceの現物です。赤、青、黒などのカラーバリエーションが知られるFuzz Faceですが、ファーストロットはこのグレイカラーとされています。この最初期のみ、筐体が後年のものよりずっと丸みがかった形状で、角部分のアールも強く、メーカー/ブランド名が記されたいわゆる口の部分は黒地に白文字、「VOLUME」、「FUZZ」、「IN」、「OUT」の文字類の細いフォントが特徴です。
そして、こちらがOrganic Sounds '66 Orga Faceです。1966年製のFuzz Faceの筐体を3Dスキャニングし、一から筐体を製造。中心の頂点部までの盛り上がり、角部分のアール、そしてその筐体に吹き付ける塗装の質感、貼り付けるゴム部分の形状、各フォント、細かな部分までを完全に再現しています。
まずは、'66 Orga Faceがヴィンテージ特有の外見上の特徴を再現しているということをご理解いただけたでしょうか。
続いて、内部の再現度に関してです。以下の写真は、元となった1966年製オリジナルFuzz Faceの基板部です。
続いて、以下が'66 Orga Faceの基板部です。まるで間違い探しのようなレベルでオリジナルに近いといえるのではないでしょうか。
配線の取り回し方法、配線材の色までもこだわり、製作者のYusuke Watanabe氏曰く、基板上のパーツのリード(足)の曲げ方まで研究し、再現されているそうです。ただし、オリジナルのFuzz Faceに採用されているゲルマニウムトランジスタ、Newmarket Transistors社製“NKT275”は、現在では良い音色の個体が全くといえるほど残されていないため、同社製、同60年代製の代替品が採用されています。このトランジスタも現在ではほとんど流通しない希少なものであり、オリジナルスペックとは異なりますが、、十分に魅力的であるはずです。
最後に、'66 Orga Faceの音色に関してです。いわゆるアタリ機と呼ばれるゲルマニウムトランジスタ仕様のFuzz Faceは、どの個体も共通して歪みの質感がオーバードライブのように滑らかであることが挙げられます。音色としてはファズでありながらもバリバリとした荒い質感は少なく、原音の質感を残したまま野太く歪みます。'66 Orga Faceの元となった1966年製の個体はそれに加えて、まさしく枯れたという表現に相応しい、よりオーガニックでドライなオーバードライブ/ファズ的な個体だったのです。
言わずもがな、そのドライな質感はこの'66 Orga Faceで見事に再現されており、FUZZコントローラーがどの位置にあっても、愛おしいとすら思える、音楽的なドライブサウンドを奏でます。そして、ギター側のボリュームを絞れば、たちまちヴィンテージ然としたクリーン、クランチサウンドが姿を現し、まるで現在聴いている名演が録音されたあの黄金時代にタイムスリップしたかのような感覚を覚えるでしょう。
'66 Orga FaceはオリジナルのFuzz Faceを完全再現するあまり、電池でしか使えず、ON/OFFを表すインジケーターもありません。しかし、ここまで愛が詰まったFuzz Faceのリプロダクトモデルは他のどのブランドにもないはずです。その筐体まで再現してしまった、唯一のヴィンテージ・クローンでしょう。偽りではない、真のゲルマニウムFuzz Faceのサウンドがこの'66 Orga Faceでも同じように体験できます。ぜひ、お試しください。
CULT 細川
Organic Soundsを主催するYusuke Watanabe氏のインタビュー記事もぜひ、併せてご一読くださいませ。
※筐体のエイジド加工は手作業によるもののため、個体ごとに風合いが異なります。
使用されるゲルマニウムトランジスタは在庫が無くなり次第、別のものへ変更となります。
写真にありますJim Dunlop JH-F1は比較用のものであり、付属いたしません。
あらかじめご了承くださいませ。