この“BMT”と名付けられたペダルは、Sara Pedalsのデビュー作であるビッグマフ系のファズペダルです。多くのバリエーションが存在するオリジナルのBig Muffの中でも、初期の仕様であるトライアングル・ノブ期のものをリファレンスにして作られており、同時期特有の枯れたディストーション/ファズトーンを作り出します。しかし、その中にもSara Pedalsの理念が存分に込められた作品です。

コントロール類はオリジナルのBig Muffと同様、左からVolume、Tone、Sustainの3つのみ。筐体内部に追加のトリマーなどはなく、シンプルな操作感も魅力のひとつです。

各コントロールの効果はBig Muff系を踏襲していながら、Toneコントロールのみは2連ポットが使用されており、この機種ならではの絶妙な効果をもたらします。
Toneコントロールは時計回り方向で高域が強調され、同時に低域が減衰し、反時計回りで低域が強調され、高域が減衰するという、Big MuffのToneコントロールの効果を同様ですが、どちらの方向に回しきっても音が破綻せず、Big Muffのオルタナティブな雰囲気は保ちながら、絶妙な範囲で音色がコントロールできるように設計されています。オリジナルのトライアングル・ノブと同様、Toneコントロールを左右に振り切った際の特殊効果的な音色は出せながら、どの範囲でも使えるような帯域コントロールが2連ポットを使った複合フィルター回路によって成されています。

裏蓋を開ければ、その内部にSara Pedalsの創設者であり、現Phantom fxでの仕事でも知られるビルダー Egawa氏の美しい配線、基板が見て取れます。ポイント・トゥ・ポイントで作られた基板が丁寧に配線され、堅牢さを高めるのと同時に、保守性も担保されています。
基板部に使われているパーツ類も多様で、特に4石のトランジスタはすべて違うものが採用されています。そういった仕様コンポーネントの多彩さからもEgawa氏の拘りの強さが感じられるはずです。

筐体はステンレスとアルミを組み合わせた、オリジナル設計のもの。サイズはW95mm D114mm H45mmという大きさで、適度な存在感があります。
ヴィンテージBig Muffの旨味である荒々しさ、澱み、太さなどはしっかりと含みつつも、絶妙に統制が成されている音色、それが特徴の1台です。「オリジナルBig Muffの音が欲しい」、「使えるBig Muff系が欲しい」という対照的な2つのニーズの両方に応えられるでしょう。オリジナルの筐体、筐体内部の仕事も含め、総じてペダル所有欲を満たすポテンシャルがあると思います。
一般的に広く知られているマスプロダクション、ファクトリーメイドのペダルはしっかりとキャリアを積んだ実力者が設計することが常です。国際的な規制の認可を取るためには高いレベルの設計が要求され、耐久テストの類も緻密に行われています。Sara PedalsはDIYながら、そういった堅実な製品を超えられるグレードを持ったハンドメイドペダルです。Egawa氏自身は“過剰品質”などと表現はしていますが、ここまでの品質で作られたハンドメイドペダルは他にないでしょう。ハンドメイドの極地であり、ハンドメイドである必然性。それがCULTが紹介するSara Pedalsの最大の魅力です。保守性も考えられており、万が一故障したとしても、修理がし易い設計が成されています。
電源はアダプター、パワーサプライなどからの外部電源9VDCのみ。電池駆動には対応していません。
化粧箱は付属せず、Sara Pedalsオリジナルポーチに入った状態でお届けとなりますので、あらかじめご了承ください。
CULT 細川